昨日の話のつづきです。インドネシア人のメイドさんが、パジャマにまでアイロンをかけてくれるというおはなし。
ジャカルタで働きはじめたばかりのころ、気になって、理由を聞いたんですよ。
「なんでパジャマにまでアイロンをかけるの?」
「これは別にかけなくてもいいんだよ」
するとメイドさんはちょっと困ったような顔をして、
「ボスに、すべてアイロンをかけるように言われているから」と。
そのときは「なんじゃそのマニュアル仕事は!」と思ったんですが、のちのち、仕事をしていて、また日々の生活で、メイドさんの出身地域にはアイロンが普及していないようだ、と気づきました。
当時、ジャカルタでさえ、停電するということがたまにありました。人口がまばらなところでは、電力供給が不安定な村があっただろうと、想像できます。電力供給設備の強度や電圧など、いろいろ問題はあるようですが、「アイロンのような消費電力の高いものを使おうとすると停電する」ということもあるそうです。
考えてみたら、メイドさんとしてジャカルタに出稼ぎをしにくるような子は、戦前に女中として出された東北の娘さん同様、所得が低い家庭出身です。そもそも出身家庭が、アイロンを必要とするライフスタイルではないのでしょう。
いやあ、この、不慣れなものを使いこなしてルーティンの仕事にするの、実に大変だと思う。
「仕事はなんでもそうだ」と言ってしまえば、どんな仕事でも大変なことに変わりはないんですが、衣・食・住にかかわる仕事って、生活の根幹でもあるし、出自のライフスタイルに密接にかかわってくるものだから。
外国やインドネシア都市部への出稼ぎで、アイロンを覚えたあの子たちは、その後家庭でアイロンをする機会に恵まれるのだろうか。この経済成長で、いずれその機会は得られるようになるといいなあ。