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みきほ氏ブログ

川崎在住、トリリンガル。日本にくる外国人観光客事情と対応術、インドネシア・マレーシアまわりのことを中心に書いています

アクトオブキリングを観たら自分がインドネシアのことまったくわかってなかったということに気がつけたメモ


Jagal - The Act of Killing (full movie) - YouTube

 1965年の930事件後、インドネシア全土で繰り広げられた共産党派虐殺(主にターゲットは華人)を描いた映画「Act of Killing(アクトオブキリング)」を、ジャカルタで新聞記者やっていた3人で、上映初日の12日に観に行きました。

 一連の虐殺事件で手を血に染めたのは、プレマンと呼ばれるやくざたち。米国人監督が、「あなたがやった殺戮を、演じてみませんか」ともちかけ、その過程を映すという非常にめずらしい方式でのドキュメンタリー映画です。ぽつぽつとネタバレ的な感想をここにまとめておきます。

自分はインドネシアのことを結構知っているつもりでいたけれど、ぜんぜん知らなかったなあ...。

 

まさに、「勝てば官軍」

 このドキュメンタリー映画のターゲットとなったアンワル・コンゴ氏は、北スマトラ州メダンで1000人規模の共産党員をその手で殺した人物。

 インドネシアでは共産党員殺戮事件を肯定的な見方をされており、コンゴ氏はまさに「インドネシア国家転覆を目指す1000人の悪人を殺したヒーロー」として人々に尊敬のまなざしで見られながら、孫と幸せそうに暮らしています。

 まさに、「勝てば官軍」の世界。この映画の冒頭に「殺人は許されない。殺した者は罰せられる。鼓笛を鳴らして大勢を殺す場合を除いて」(ヴォルテール)の詩のままです。

エンドレス嫌悪感

 全体通してこの映画には並々ならぬ嫌悪感を抱きました。

 このドキュメンタリーの主役ともいえるコンゴ氏は「なたで殺すと血が溢れ出て掃除がすっごく大変だったんだ。におうしね〜参っちゃうよね。だから、こんな殺し方を生み出したんだ。針金でさ...」とかなりにこやかに、誇らしげに、フレンドリーにその殺し方を披露する。まるで、子どもがどうやって賞をとったかをまわりの大人に説明するかのように。

 また、ほかのプレマンの「オレたちは自由だ。ドラッグもエクスタシーもメタフェタミンもやる」「共産党員の女だったら当然のように犯すね。それが14歳とかだったら最高。犯して言ってやるね、『お前には地獄でも俺には天国だね』」という台詞には並々ならぬ嫌悪感がわき上がりました。

 

プレマンってなんなんだ?

プレマンの語源は「フリーマン」。自由人。自分たちのやり方で人生をを楽しむぜ、というスタンス。

ジャカルタにいた頃のわたしのプレマン(やくざ)と呼ばれる人たちへの認識は、物乞い孤児の元締め、路上駐車管理の元締めなどとして暮らし、ときには暴力的なデモ隊として日系工業団地を襲うたぐいの人たち、という程度でした。要はよくわかってなかったんです。

 

 この映画では、そんなプレマンの日常的悪事もがんがん映し出されています。

 白昼堂々、華人の商店にみかじめ料を要求するプレマンたち。1万ルピアじゃ「だめだだめだもっと出せ」と結局5万ルピアくらいで納得したのかな。

 インドネシアは、封筒はどこでも売られているのに便せんは売っていない、不思議な国だなーとずっと思っていましたが、ここではじめてその理由がわかりました。封筒の使い道は、私がぜんぜん想像出来ていない物でした。やっぱり私はインドネシアのことをよくわかっていなかったなあ。

 

私も空港で税関でしょっちゅう賄賂的な要求をされたけど、あの「見逃してやるからカネを出しな」的な行為は、本当に文化として隅々まで根付いているんだなあ。

 

熱演なのか、ガチなのかわからなくなる

村を襲うシーン、火をつけるシーン、共産党員を殴るシーンなどえぐいシーンも村人の協力のもと再現されていく。
そのシーンが、みんな演技しているのか、本気でおびえているのか、わからなくなってくる。

観ている我々もそうでしたが、スクリーンの向こう側にいる元加害者たちも、村人の混乱に戸惑っている。


一番気になった人はこの人

この映画を見終わって1日経って気になっているのが、「コンゴたちがどうやって共産党員を脅したか」のシーンを映すために募った共産党員役に立候補した男性。元共産党員に引き取られたという男性で、12歳のときに義父が共産党刈りにあい、殺され、父の遺体を埋める穴を掘った話をしてくれます。

 そして、共産党員としてコンゴたちに脅される役を演じます。「お前が死ぬかお前の子どもが死ぬかどっちだ」ーーどんな気持ちであの役を演じていたのか。一番気になる人物でした。

 

YouTubeでタダで観れます(字幕なし)

アクトオブキリングの日本上映版は2時間1分ですが、YouTubeには2時間40分版のフルバージョンが上がっています。(当たり前ですが字幕なし)

また何度か見返して、感想を深めたいなと思いました。

 


Jagal - The Act of Killing (full movie) - YouTube