みきほ氏ブログ

川崎在住、トリリンガル。日本にくる外国人観光客事情と対応術、インドネシア・マレーシアまわりのことを中心に書いています

イスラムファッションについて 2013夏版

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 母校の南山大学外国語学部が50周年ということで、アジア学科内のHPで「インドネシアは今」という連載を書かせて頂いてます。ーーおしゃれに「信仰心」をまとうイスラムファッション

 私もそうですが、最近インドネシアに来た人は、「インドネシアは近代化してどんどん国際化しているから、非イスラム化していくだろう、イスラム色はどんどんゆるくなっていくだろう」と予測しますが、それは不正解。研究者やインドネシアに長くいる人いわく「年々、ジルバブ(イスラム女性のスカーフ)かぶる人が増えて来た」とのこと。逆なのです。

 まず、インドネシアのジルバブについて。これは、かぶる女性とかぶらない女性がいます。一応自由とされていますが、気分によって被ったり被らなかったりするというものではありません。(もちろん、ファッションとしてそういうことする人もいますが、絶対的少数派)

 いままで被らなかった人が被るようになる、ということはあっても、被っていた人が被らなくなった、ということはほとんどありません。

 

 このイスラム化を加速させた原因の一つに、所得が増え、巡礼にいけるようになったことが挙げられるでしょう。

 聖地巡礼は政府の宗教省が管轄しており、だいたい参加費用は航空券など込み込みで少なく見積もっても3,500ドル以上。昔は高額でしたが、近年の経済成長による所得増で、以前より金銭的ハードルが低いと感られる所得層が増加傾向です。

 しかし、お金があれば誰でもいけるというものではありません。サウジアラビアから割り当てられている巡礼定員が毎年約20万人。ここ数年は定員オーバーということでウェイティングリストに入れられ、行けるのは十年後というケースもあります。

 巡礼に行ったことがある女性は、みな「信仰心が高まった」「ムスリムとしての自覚を持つようになった」と口を揃えます。巡礼をきっかけに、ムスリムとしての自覚を持ち、ジルバブを被るようになったーーそんなムスリマ(イスラム教の女性)ゴコロの変化があるのではないでしょうか。

 

 また、インドネシアの食文化研究者の阿良田麻里子さんは、昨年出た本『民族大国インドネシア—文化継承とアイデンティティ』の「ジョジョバ(幸せな独り者)ー都市部におけるキャリア女性の食行動とジェンダー規範の変容」で、結婚後、夫になった男性からジルバブを被るよう求められたというケースがあることを指摘しています。

 たしかに、私のまわりにも結婚後ジルバブを被るようになった女性がいます。自分に付いて来る、おしとやかな女性を求める傾向があるインドネシア人男性。「自分の妻はムスリマとして潔癖な装いをしてほしい」という願望を打ち明け、妻はそれに従う、という図が思い浮かびます。

 インドネシアのジルバブは年々おしゃれになっており、むしろ「ブローチやら色使いやら素材やらも計算して着こなせる人こそ真のファッショニスタ」、というような風潮もあります。

 

 インドネシアは2020年までに世界のファッションの中心地になることを目指しています。正直、「世界の」はまだまだ難しそうですが、イスラムファッションの中心地には、なれそう。いや、むしろなってほしい!

民族大国インドネシア―文化継承とアイデンティティ

民族大国インドネシア―文化継承とアイデンティティ