みきほ氏ブログ

川崎在住、トリリンガル。日本にくる外国人観光客事情と対応術、インドネシア・マレーシアまわりのことを中心に書いています

エアアジアとマレーシアと日本

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話題としては遅い話ですが、エアアジアの羽田就航決定となりました。飛行機関係者id:salamannちょびっと言及していましたが最安5,000円で羽田からマレーシアのクアラルンプールに飛び立てるわけです。これからエアアジアが日本でどういう位置づけになるか分かりませんが、アジアでビジネスを展開する人でエアアジア1000回くらい乗りましたって言う邦人が、エアアジアの乗り方とか注意する点とかをまとめた本を書いたらそこそこ手に取る人はいるんじゃないかなーと思います。
私はそういったビジネスマンらには劣りますが、エアアジアにはかなりお世話になっています。計算してみたら最も搭乗回数が多い航空会社は、エアアジア。といっても12回か。この間のジョクジャカルタの旅行にもエアアジアでいきました。過去のエアアジアに関するルポはこちら
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格安航空会社(LCC)はヨーロッパでは当たり前なのでご存知の方も多いんと思いますが、LCCと一般航空会社では、高級高速バスと格安高速バスくらいのサービスの差があります。前者は「いろんな豪華なものを用意しておきますね」、後者は「必要なものを最小限に抑えてもらって、あとは足し算していってね」という発想です。新聞読まない人にとったら機内新聞サービスはどうだっていいし、飛行機でとにかく寝たいんだと言う人は機内食はむしろ無い方がいい。バックパックで来る人は、荷物許容重量20キロもなくてもいい。
だから、飛行機に乗ったって水も配られないし、機内食もないし、個人的に困るんだけどブランケットもない。だから飛行機の中は寒い。くつしたなしでは乗れない。あと飛行機は平気で遅れる。この間は1時間も遅れた、一本前のフライトにすれば良かった。
発行される搭乗チケットにいたっては感熱紙という、必要なものを最小限の質でおさえている(?)。上の画像は「こんな機内食選べますよ、しかも今は安いですよ」という看板と「追加料金払えばこんだけ荷物運びますよ」というポスター。スカルノハッタ(ジャカルタ)空港のエアアジア・オフィスにて。最近1円=106ルピアなのでゼロ2個とればだいたいの値段がわかります。

エアアジアがなぜ今こんなに勢いを増しているのか。いろいろ見方はあると思うけど、2003年から2004年にかけてマレーシアに滞在していた私からすると、経済成長によって所得がみんな上がり、でも手軽に飛行機にのって旅行できるほどリッチではない、という中間層の気持ちをうまい具合にくすぐる広告戦略を立てたからだと思います。当時の新聞には、冗談みたいな値段「クアラルンプールからシンガポールまで3リンギット(当時で約190円)で提供するキャンペーンやります!三日限定!あなたも空を飛べるんですよ!-everyone can fly!」じゃあ往復400円もかからずに行けるのか、いやそんなことはない。シンガポールークアラルンプール間は今だとだいたい3000円から6000円。帰りの飛行機がちょっと割高になっていたりするけれど、それでも片道料金で旅行に行けるのも同然です。純粋にテンション上がりますよ。「ほんとは往復12000のところが7000か、うーん、がんばっていっちゃおう!」という気持ちになるよ。機内食なんかいらない。そのへんのグライ(屋台)で作ってもらったロティチャナイやらナシレマをブンクス(持ち帰り)にして飛行機の中で食べればいいんだもの。
安く、誰にでも親しまれる航空会社という路線できたエア・アジアは、マレーシア人にとってはナショナルフラッグのマレーシア航空よりも、重要な存在になっているのだと思う。「強いマレーシア」を体現している企業だからね。私がインドネシアに就職することを告げると、マレーシア人は口を揃えて言う「You can fly to here with AIR ASIA lah!/Miki bisa datang sini dengan AIR ASIA lah!」。マレー系も中国系もインド系も口を揃えて、ヌガラク(国歌)を歌うかのごとく。国や地域といっしょに成長していったんだ。そんで日本に攻めて来たという訳です。

正直エアアジアが日本で受け入れられるかどうかわからない。良質すぎるサービスを受けることに慣れきった日本人は、7時間もの長時間をゲームも映画も新聞もなんにもないエアアジアの機体に収容されることは辛抱ならんのではないか。でもマレーシア人は、キャノンやニコンの一眼レフカメラを首に下げて、iPhoneかブラックベリーを操り、本物か偽物かよくわからないブランドもののバッグを手にして、マレー語なまりの、でも日本人にしたら聞き取りやすい英語を話しながら、羽田にやってくるんだろう。「ルックイースト」で憧れた日本に東京を見るんだろう。彼らの目にいまの日本はどう映るのか。