アートとクリエイターと政治
平均年齢28歳と若い人が多いインドネシア。若者が担う芸術は勢いがあり、たびたび度肝を抜かれる。
今回私が度肝をゴッソリ抜かれたのは、9月20日にあったジャカルタ州知事選挙がらみの「政治がらみのアート」だ。ジャカルタの選挙は、クリエイティブでアートでエンターテイメントだった。
選挙そのものは、保守派・現職の「口ひげ」がトレードマークのファウジ候補と、革新派・チェック柄のシャツをトレードマークにしたジョコウィ候補が争うというわりと分かりやすい構図。人口1000万人都市のガバナーを決めるわけなので、選挙としては相当おおがかり。そんな中、革新を期待するクリエイター集団(cameo project)が、ジョコウィ候補し、こんな動画を作った。
動画の流れはこんなかんじ。
朝起きて、住民カード(身分証明書。ないといろんなサービスが受けられない)を更新しに役場にいかなきゃいけないことを思い出して、出かけたらすっごい渋滞。「ああ、俺が通れる道はどこ!?」3時間かけて最寄りの役場に着いたら、30人待ち!ていうか役人いない!!冷房ねーから超暑いし!!! ようやく
役人が現れた。しかし、「作るのに3カ月待ちだよ」「はやくやってほしかったら(賄賂)出しな」「え?ない?じゃあ明日またおいで」ーーああ、なんでジャカルタはこんな町なんだ。ーー変化が必要だ!新しい州知事が必要だ!「ジョコウィが必要だ!!」ー
そしてジョコウィ氏のトレードマークであるチェック柄シャツに着替えて踊り出すーーー
One Directionの What makes you beautiful(http://www.youtube.com/watch?v=QJO3ROT-A4E
)の替え歌で、最後にはみんな期待にあふれた表情で踊っているのが印象に残ります。
再生回数は3日で50万回を突破。
インドネシア発の動画で短期間で再生回数がこんなに増えるのはとっても稀なので、地元TV局も取り上げ、さらに再生回数が増えたとか。
ジョコウィ氏のトレードマークであるこの赤と青のチェック柄のシャツは道端でも売られ、売り上げの一部がジョコウィ氏の選挙対策チームに送られるという仕組みになっている。だけどそのうち人気と話題に乗じて同じ柄だけどジョコウィ氏にまったく売り上げが送られない「レプリカ」を売り出す業者も現れたらしい。
投票前の日曜日には、ダンサーが先の替え歌にあわせて踊り出すイベントを町のど真ん中で開催。数千人規模が集まった。(一分目くらいからが見所)
クリエイターの仕業が、ジョコウィ氏への期待の現れかーー?
この国は若い人が多い。若い人が作る芸術に勢い、元気がある。若者文化の一つである「ダンス」と組み合わせたのも盛り上がった原因の一つかもしれない。
「若い人が多い国」の選挙は、老人ばっかりの日本のものと比べ物にならないくらいおもしろかった。若者にも分かりやすい「エンターテイメント」で、『お祭り』だった。
日本で同じことができるかといったら、ちょっと難しそうだ。アーティストは政治に興味はあるのか?政治家はクリエイターと距離を縮めようと思うのか??
アートと政治が結びつくことに違和感を覚える人がいるかもしれない。けどクリエイターは活躍の機会を得るし、これだけ選挙に関心が低くなってる日本では、かえってそれくらいがちょうどいいんじゃないのかな。
2014年は大統領選挙。ここでどんなクリエイティビティが発揮されるのか。楽しみだなー。