(夏の読書)竹林はるか遠く―日本人少女ヨーコの戦争体験記
夏だ!花火だ!夏休みだ〜!とはならず、毎年金曜ロードショーで火垂るの墓を見ていた世代としては、夏と言えば戦争体験に思いを馳せる季節です。ここ数年は少年Hや大地の子を延々と繰り返し読んでいたのですが、今年の戦争体験作品一作目はこちら。
- 作者: ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ,Yoko Kawashima Watkins,都竹恵子
- 出版社/メーカー: ハート出版
- 発売日: 2013/07/11
- メディア: ハードカバー
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もともと米国で話題になり、中学校の復読書としても広く読まれた作品。ですが、近年韓国系アメリカ人や韓国人の方々が好ましくない表現が有るとして排斥運動をアクティブにしていたそうです。「どのへんの表現が韓国の方々の逆鱗に触れたのだろうか」と思いながら読み進めていきました。
感想箇条書き。
- 「共産主義の兵隊」が引き揚げ者を襲って金品を奪っていくという描写、トイレで用を足したあとの女性が婦女暴行にあったという描写があったが、力あるものが弱者を襲うのは「非常時あるある」。(例1:ジャカルタ5月暴動。例2:支配者階級と被支配者階級の因果関係をおいておくと、2005年の米国・ハリケーンカトリーナ、2010年のハイチ大地震でも略奪や強姦があったと報道あり。例3:戦後内地にいた日本人女性も進駐軍にたくさん強姦されたらしいしね...)
- 引き揚げの話はどの話も壮絶。最後に救いがあった。
- 上流階級の一家の話ではある。「お父様」「お姉様」と呼んでた家柄だもんなあ。
- 親切な朝鮮人家族もたくさん登場している。とくに主人公の兄が凍死寸前行き倒れになりかけたときに救ってくれた朝鮮人家族。兄はその朝鮮人一家の子どもたちに数学を教えたりしている。このことからも、主人公一家が高い教養を持ちそれを惜しみなく他者に分け与えることができる、精神的にも上流の人々ということがうかがえる。将来自分の子どもが「なんで算数なんか勉強しなきゃいけないの計算機あるからイラネーじゃん」とか言い出したら、こういう話をしてもいいと思う。
- 朝鮮人よりも日本に引き揚げたあとに主人公が通った京都の女子校生徒がひどい。人を見てくれで判断するのは程度が低い人間のすることだな、ということを改めて教えてくれた。
- ケンペータイはどこの地域でも振る舞いが残念。立場的に「共産主義の兵隊」よりコンナコトヤッチャダメ感ある。
感想としては、「戦争あるある」というより、「混乱期あるある」「非常時あるある」盛りだくさんのお話。どのへんが韓国の方々の神経をさかなでたのか、最後までわかりませんでした。
戦争そのものはこわいけど、この非常時の人間もこわい。自然災害などはある程度仕方がないとして、この「非常時」を人為的に起こしてしまう戦争を発生させないようみんなで努力しなきゃいけないよね、という願いが込められているように受け取りました。
それを、かの国の方々はかのように曲解するとは。政治的・国策的な曲解なのでしたら、「多文化共生」の難しさを改めて感じた次第です。
あと、興味深かったのは、当時朝鮮の方と日本の方でリュックの背負い方が違っていたこと、それで日本人か朝鮮人かを区別することができた点だな。
— miqiho (@miqiho) 2015, 7月 20