なりたくてもなれない「バリキャレーゼ」 必要なのは運の良さ?
夫から「バリキャレーゼって知ってる?」とLINEがきて、検索したら32件しかヒットしなかった。日経の造語だな、それをどや顔の見出しにするとは.../仕事も家庭も欲張る「バリキャレーゼ」女性が増加中 :日本経済新聞 http://t.co/i7d3EutBo0
— miqiho (@miqiho) 2015, 8月 10
日経夕刊の記事です。
紙面ではあまりにも「バリキャレーゼ」という文字が「お前、バリキャレーゼって単語、知ってるよな?」と主張する感じの見出しフォントサイズで出ていたので「どや顔の見出し」と表現してしまいました。
仕事も家庭も欲張る「バリキャレーゼ」女性が増加中 :日本経済新聞
「バリキャレーゼ」を目指せる条件
キャリアをある程度詰んだらだれだって、崩したくないですよ。出産・子育てのため崩れることがわかってるから、「最初から詰まない」って計算している人は多いと思います。(特に金融系。わたしの周りでは。)
キャリアを目指し続けるにはクリアしないといけない「条件」があります。この記事は「こんな働き方をする女性を増やすには、企業はどんなサポートをすればいいか、企業側に提案する」という視点で書かれています。
では、企業の体制以外に、バリキャレーゼの女性たちはどんな条件をクリアする必要があるか。ちょっと思いつく限り書いてみました。
家事の負担が低いこと
キャリアを詰みたい人の、家事・育児の負担率が高すぎないか。
人がキャリアと家庭を両立させるためには、どうしてもほかの家族のサポートが多少なりとも必要となってきます。記事を書かれた平田浩司さんは編集委員。日本経済新聞社の中でキャリア組に入る方でしょう。家族構成は存じ上げませんが、身の回りの世話をしてくれる家族のサポートがなければ、今の地位はないということを実感される立場だと推測します。
男女雇用機会均等法施行から29年経ち、人手不足といわれる2015年になってくると、男性だろうが女性だろうが、働く人は働く人で平等に1カウントしないと回ってきません。(本来ならば、ね)では、家事を誰がやるか。
女性の仕事だから女がやれって?女性が仕事も家事も育児もフルにやってたらキャパオーバーしちゃうよ..
具体的に:夫が家事をする、家事を負担してくれる親戚縁者などが近くにいる、メイドさんやベビーシッターがいる、定期的に家事代行サービスを受けることができる
(シンガポールではメイドさん普及率が高いため、ワーキングマザー率8割などめちゃくちゃ高いです。メイドさんは住み込みか、週3とか週5できてくれますから。)
家族全員が健康であること
家族全員が健康であるか。
これは「家庭内の協力」とも若干重複する部分があると思います。
例えば我が子が大変な手術を立て続けに受ける必要があったり、足を切断することになり心のケアとリハビリへの送迎が必要になったり、夫を週3で透析に通わせる必要があったり...。誰かが特別なケアが継続的に必要であれば「家族の健康のケア」のために家族の誰かが時間を割くことになります。
それを家事の一つとカウントするほうがわかりやすいかもしれません。しかし、家事と違って、健康のケアの内訳には、外注が難しい心理的なケアも含まれています。自身としても、「一番つらそうなときだからこそ、そばにいたい」という葛藤が出て、外注ではなく、自分でケアしたくなるのではないかな、と。
「自分のキャリアの方が大事だから、子供左足切断したばかりだけどリハビリ送迎はタクシーに任せるわ」、という決断を下せる人は、とても強い意思をお持ちだと思います。
例では肉体的な健康面ばかり挙げましたが、精神的に健康であることも条件に含まれます。そして、自分の心身もね。あと、「不妊治療をしたい」と最前線をいったん退いたお笑い芸人がいたのも、記憶に新しいですね。
子供の預け先があること
復帰したいタイミングで、子供の預け先を確保できるか。
これは子供がいる家庭限定の話になります。私が住む川崎市では、保育園は第8希望まで書いて申請しますが、まあ通らないらしいです。
そのため認可外や小規模保育なんかを含めて14箇所くらいの見学に行く必要があると感じていますが、これ、けっこう時間がかかります。4−5園に見学予約の電話かけて調整するだけで、1時間くらい時間が過ぎてしまいます。
私は現在時間の融通が利くので保育園見学に行けますが、保育園はいつでも見学できる訳じゃないですから。園によっては月に2回に絞ったり、特定の曜日の午前のみと受付時間を限定しています。
川崎ですら、こう。都内ならもっと大変そう。産休期間や産まれてくる月のタイミングにもよりますが、下手すると*1キャリアをいったん横に置いとかないと、キャリアを続けるための保育園探しが出来ないよ......。
バリキャレーゼを目指すには、仕事以外での「運」も必要
「バリキャレーゼ」という言葉が似合う方は、最前線の女性起業家・役員をはじめ数多くいると思います。その中でも、この方のエピソードが強烈に残っています。
その時代に育メンの男性をパートナーに選べたというのはスーパーラッキーですよ。
お子様もみな五体満足で産まれたようです。
また、当時はそこまで待機児童が多い時代ではなかったのでしょう、ここでは保育園探しに苦労したというエピソードはありません。
お子様が中学のときに受けた手術も無事成功し、定期的に通院の必要性もなかったようです。
私が挙げている3点すべてクリアしているようにみえます。
でも、私はこれを読んで、「すっげー運が良かった人だったんだな」と思ったんですよ。
これ、そりゃ努力・根性・キャリアの探求心が必要なこともわかります。ここでは書かれていない葛藤もあったんだと思います。
でもね、「私は仕事を辞めるべきではないか」という葛藤に陥る事柄が、また仕事を辞めるという決断をさせる事柄が、立ちはだからなかった。あるいは、葛藤に打ち勝てた。
このことが、なにより「運がよかった」んじゃないでしょうか。
関連図書
おそらくスタートラインは「バリキャレーゼ」と同じだったけれど、運が悪くて貧困に陥っている女性が出てきます。結婚後の夫の化けようは夏のホラー。
夫との絆ほど不安定なものはないから女性も働かないかんぜよ、と提唱する白河先生。離婚するときも、稼ぐ力があればふんぎりつくぜよ。
義務教育化すれば少なくとも保育園探しにげっそりしなくてよさそうです
*1:ちなみに中部地域の方にこの第8希望の話をするとみんなどん引きしています。地域差ってあるからね